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HEAVEN BEYOND THE CLOUDS
天使がいる空

8月19日
(written on 6月20日)

 

本を読みながら電車に乗っていて、ふと外を見ると
ビルの間にこんな空が見えました。

あ、ぶれててもしょうがないのよ。

あたしのせいじゃないよ。
電車揺れてるからね。

電車の中でも 京急の快特の、ぶっとばし方って言ったら
もう、有名なんだから。




あ、下の写真と比べちゃだめだよ。

あたし、電車から撮ってんだからね。

三脚立ててとってる人とは違うからね。



あ……、これ、船の上から撮ってんな。
船に三脚立たねーな。
立つかも、しんないけど、意味ねえーな。

船と電車じゃ……、あたしの負けじゃんかよ。

……なんで、船から、こんなん撮れんだよ。

あ、…カメラが違うから。
嘉山さんのカメラ高いから。

同じカメラだって言われたら、あたし、倒れて
立ち直れないから、聞くのやめよっと。

ま、いいや。

あ、川だっ!!!

ぱちっ!

 

こんな風に、暮れて行く事を
忘れていた毎日でした。

人が生まれて、生きて、そしてそれを終えるのを
毎日繰り返される太陽の光が教えてくれているのを
考えることもありませんでした。

 

叔母が入院しました。

病院の叔母から母に
「なんだか、ごはんが食べれなくて、病院に来たら
入院になっちゃっただけだから、心配しないでねー」と
電話があった位の、気軽な入院でした。

お見舞いを、遠慮するように言われたわけではないのですが
日頃仲の良い、従妹が何も病状を言ってこない
というのは、良くない情況だとは、想像がつきました。


皆がお見舞いに行くと却って叔母が心配するといけない…という事で
親戚はお見舞いを遠慮するという事にしていました。

何かあれば、あちらから連絡があるはずだから
こちらから聞くのはやめよう…という事にしていました。

 

従妹と私は仲が良いのですが、
叔母の病状を詳しく話すという事がありませんでした。

お昼を一緒に食べたりしていましたが
いつもと同じでした。

その様子から、私は
「あまり、希望を持てない状態なんだな」と思いました。

母が、末期の癌で、余命は2年以内と医者に言われた時に
私がそうであったように、
つらい現実を受け入れるざるを得ない時には

それを乗り切るためには
いつもと同じ生活をする…
つらいことは口にしない
…という事は病気の事は誰にも言わない…
という方法しか取れない人もいます。

 

いつも、私は
「…泣いたら終わり。二度と立ち上がれない」と思っていました。

多分、従妹もそのタイプなんだろうな…と思いました。

叔母が昏睡の状態だという連絡が従妹から来たのは
先週でした。

母には、自分よりずっと若い叔母が
今、昏睡という現実はつらすぎるので、黙って病院に行きました。

昏睡の状態で落ち着いているので
ずっと病院に泊まっていた、従妹二人が
ちょっと、家で帰るというので、一人になった叔父と
病院の叔母のそばで、二人で夕食に、おにぎりでも
食べようと、夕方に行きました。

叔母は、母が入院中に一人家に残った父が
寂しいだろうと良く一緒に夕食を食べてくれました。

 

病院に向かう途中のタクシーの中で叔母が息を引き取った事を
従妹の電話で知りました。

従妹はすぐに病院に引き返すというので、それまで
病院にいようかと思いました。

遠慮しようか…とも思いましたが…
病室のドアをそっと、押すと
そこには、いつもと同じような叔父がいました。

「あー、聡子ちゃん。来てくれた?
今、息を引き取ったよ」 と言いました。

「今、眠ったところ…」と言われたのか思う程、
普段と同じ口調でした。

 

私が叔母の横に座ると
叔父は
「さっきまで、淳子達がいたんだよ。
あいつらが、いなくなったら…きっとその時だな…と思ってたんだよ」
と言いました。

「いつでも、容態が悪くなるのは、僕が一人の時だったんだ。
いつも、娘達がいたのに、ちょっと席をはずすと容態が悪くなる」

「今日の様な気がしたんだ。
僕の誕生日なんだよ。
これが行った日を、忘れようがないよなぁ…」

「ホントに僕が思った通りに行っちゃって。
なっ?」と言って、叔父は、叔母の額をポンと叩きました。

目には涙がありませんでした。
本当に優しい顔をして叔母を見ていました。

それから、まるで、元気になって退院する人の家族の様に
叔父と私は、荷物の整理をしました。

紙袋に6つもありました。

私が詰めていると叔父が
「ホントに、こんなに沢山、着替え持って来ちゃって」と
笑って言いました。

私も
「なんで、こんなに沢山、パンツがあるのよう」と言いました。

叔母のいろんな話をしながら、片付けをしました。
叔父は時々、目の端をタオルで拭きましたが
顔は穏やかでした。

「僕は、これで良かったと思う。何もしらないまま、すっと行ったと思う。
病気がわかってから短かったけれど、これがこの人の運命なんだよな。
皆に可愛がってもらって、幸せな人だったよ。 」
と 言いました。

順番に紙袋に詰めて行くと、下の方に、お財布とか小さいバックが
ありましたので、これは大事なものだから、別にして、
叔父に渡そうと、小さい袋に入れました。

手に取ると、その財布は、私が自分とお揃いで母に買ったものを
叔母が見て、
「いいわね、いいわね」というので、私の分を上げたものでした。

10年は経っていると思います。

母には、私が良く
「もう、汚いから、捨てなさいよ!!」と言っていましたが
「使いやすいから…」と使っていました。

叔母もこうして、使い続けていてくれたのを知りませんでした。

とっくに、捨てたと思っていました。

 

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何もしらないまま…とは思いたいですが
叔母はなんとなく、わかっていたかもしれません。

従妹に
「これだけは、よーーっく言って置くけれど
いつ、死んだとしても、私は、今まで幸せだったから、それでいいんだからね」
と言ったそうです。

「良くテレビドラマにあるみたいに、機械がピーーって言って
お医者さんが走りこんできた時に
『おかあさーーん』とか呼ばないでよ!
黙って行かせろ。呼ばれたら
『え?なに?』と思って、帰ってきちゃうかも知れないから。
機械がピーーって言う位だから、帰って来たら
体ボロボロで大変なんだから。呼ばないでよ」と言ったそうです。

こんな叔母ですが、やはり、子供達に、さよならの瞬間の
つらさは、味あわせたくなかったのかも知れません。

子供達が席を外すのを待つように、
叔父が一人の時に行きました。

旦那さんより、子供が頼り…という人は多いと思います。

最後に
「お父さん、お父さんがいてね。子供達可哀想だから。
お父さん、男だから、お父さんがいてね」と
思えた叔母は、幸せな人だったなぁ…と思いました。

 

 

叔母が望んだように、叔父は一人で、
優しい顔をして、慈しむ様に叔母を見ていました。


叔母は、途切れ目が無いように、空に昇った様に思います。


今、空の彼方のどこかに、ゆったりといるように思います。


この写真を見たのは、もう、2年ほど前だと思います。

その時には、叔母とのお別れにこの写真を思い出すとは
思いませんでした。

叔母がもうじき、生を終えるとわかった時に何故だか
私は、この写真を思って
「どうか、途切れ目がなく、そのまま天の昇ってくれるように」と
この写真を見ました。

叔母は、私達より、ちょっと先に、こんな美しい空の向こうに行くだけと思うと
哀しくないような気がしました。

毎日見ていても気に止めることもないままに過ぎる夕陽。

写真は知らない間に心のどこかに残って、いつか、心が必要な時に
甦ってくるものなんだなぁ… と思いました。

すぐにうつろう光と影。

それを、とどめる一瞬を決めるシャッターを押す指にも
小さな神様がいるような気がしています。

美しい場面を、見る人の心に留めてくれる為に。

 

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しかし、写真の違いには愕然とする……。

もう、こやって、私の写真を一緒に載せるのやめたっと。

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母から電話がありました。

この母という人は、本当に、
「 どうして、こういう事を 私に聞く?」
という事で電話してくる人なので、
私は、いつも、邪険なんです。

例えば、
「…ねぇ、ママ、このおうどん、茹で時間、5分て書いてあるけど
まだ、固いんだけど、もっと茹でてもいいかねぇ…」とか。


「ママ、あのお財布、とうとう、ファスナーの所が破けた。
輪ゴムで止めてもお金が落ちる。
今度、どんなお財布買ったら良いだろうね」

破けた財布、輪ゴムで止めて使ってたのか?

私が病院で、母と同じお財布を片付けた
事を、 母は知りません。

おばちゃんが、お財布持って行ったな…と思いました。
姉妹で使い続けたお揃いのお財布でした。

言うと、泣くから、言わないっと。